Campus Management.
キャンパス マネジメントへの体制構築
1992 年、キャンパスの長期的な整備計画を示すマスタープランの策定や個々の施設の計画を、建築教員の専門的立場から検討し、整備の推進や運営の支援を行う組織として本部に施設計画推進室(現施設・環境計画推進室)が設立された。同時期に東山キャンパスにおける最大部局の工学部に施設整備推進室が設立され(以下、本部・工学部の両推進室を総称して[推進室]とする)、実行組織である施設管理部との教職協働のもと、建築学教室での研究によるエビデンスに基づき、利用者の要望に寄り添いながら計画や設計を行う体制が構築された。
2004 年の国立大学法人への移行の前頃から、施設の老朽化、スペースの配分、維持管理費・光熱費削減、地球環境への配慮など今日的な課題に対して、推進室と施設管理部は施設やエネルギーの運用のあり方に基づき大学執行部への助言を行うなど、整備に留まらずキャンパス全体の戦略から運用に至るマネジメントを行うコア組織として関係を強化していった。さらに、利用者と設計者・施工者との橋渡し、施設整備・運営上の関連部局との連携、自治体・地域社会や第三者機関などプロジェクト・パートナーとの関係構築を主導している。
キャンパスマネジメントの特徴
名古屋大学東山キャンパスの創造的再生に向けた、施設の総合的な戦略・企画・計画から実施・運用に至る、この10年余りのキャンパスマネジメントの実践的取組みを紹介した。その特徴は以下の3点にまとめられる。
1)包括的なキャンパスマネジメント
による一貫した施設整備や運用
FMの重要性を認識し、施設に関わるデータベースや点検評価の制度を他大学に先駆け導入した。施設の定常状態の評価から、目標を定めその管理を行うPDCAサイクルの仕組みを構築してきた。多くの施設整備や運用での実績をふまえ、キャンパスマスタープラン2010では、キャンパスの交通や緑化、省エネルギーなど様々なプロセスや個々の計画においてマネジメントを実践する仕組みを示し、長期的かつ包括的な視野と実現可能な手法による一貫した整備や運用を行っている。
2)教職協働による先進的なアイディア
に基づく創造的再生
既存のキャンパス空間の骨格や豊田講堂をはじめとする優れたモダニズム建築を重要な資産として捉え、保存再生するとともに、その理念を継承しながら新たな価値を生み出すデザインを誘導している。FMやEMにおいても、スペースチャージ、中長期保全、ベンチマーキング、ESCO事業、コミッショニングなど、国立大学初の試みをいくつも実践し、最小コストで最大効果を生む持続可能な手法を、教職協働で生み出している。
3)研究に基づく理論的根拠を伴うマネ
ジメントとフィードバックによる循環
こうした一連の取組みでは、建築計画や環境設備研究室での研究成果を、計画目標の設定や、実行した結果の検証のための理論的根拠としている。さらにその結果を次の実践や研究へとフィードバックする循環的な仕組みを持っている。また、多くの研究会や報告などによって、産官学にわたる多方面の施設の運営に貢献している。
小さなマネジメントを重ね合わせ、包括的なマネジメントへと進化