Energy Management.
キャンパスの低炭素化方針
名古屋大学の年間CO2排出量は、現在、約7.5 万トンにものぼり、名古屋市最大のエネルギー消費民生事業所となっている。これをうけ、CMP2010では低炭素エコキャンパスの実現を大きな柱に据え、「省エネ・環境負荷低減アクションプラン」にて「2014年時点で2005 年比20%を超えるCO2 排出量削減」という目標を設定し、この達成に向けて一層の省エネルギー推進を行ってきた。
デマンドレスポンス:
電力消費のピーク時に電気料金単価が割高になったり、節電努力に応じて何らかの報酬が得られたりすること で、電力消費の総量を抑制する仕組み。
省エネルギー・環境負荷低減アクションプラン
建物の新築・改修における省エネルギー化
キャンパス内の新築・改修の建物設計おいては、CMPで定めたデザインコードにしたがい、断熱強化やルーバーなどによる日射遮蔽などの建築的配慮、アースチューブや井水利用、自然換気などの自然エネルギー活用、省エネルギー配慮型空調の導入などの手法によって、省エネルギー化を実践している。
2011年に完成したES総合館は、全館LED照明、自然換気システム、地域産自然素材の活用など、当時最先端の省エネルギー・環境調整技術を盛り込んだCMPで目指す低炭素建築の具現化であり、同館に投入された技術やノウハウはその後の施設に反映されている。また、学内のエネルギー消費実態の把握には早くから着手しており、データに基づく省エネルギー対策に取り組んでいる。例えば、空調設備容量が過剰となっているという課題に対し、施設利用状況と空調稼働状況の分析を行って設計基準を見直している。
ES総合館での省エネルギー・環境配慮
既存建物の省エネルギー化推進
学内の循環可能な予算確保による空調機器更新、個別空調の集中省エネルギー制御、Web による電力消費量の見える化などにより、施設の省エネルギー運用対策を行っている。
既存建物の省エネルギー改修促進のための学内融資事業として、「省エネ推進経費(井水浄化施設による市水使用料削減額を原資)」を2009 年度より設立し、照明LED化、フリーザなどの実験機器更新、網戸設置、省エネ診断などの資金源としている。また、学外資金による省エネルギー設備改修を目指し、ESCO事業を、附属病院や附属図書館、動物実験施設にいち早く適用した。これにより、年間1,000トン以上のCO2 排出量削減を達成した(国内クレジット承認事業トップ10入り)。
学内の省エネルギー推進組織は、全学の省エネルギー推進WGのほか、学内の多分野の研究者と事務・技術職員・学生・生協などからなるエネルギーマネジメント研究・検討会(EM研)があり、そこでの様々な調査・実証の知見が、学内省エネルギー施策に生かされてきている。
アースチューブの埋設工事
地域産自然素材や自然エネルギーの活用
キャンパスの低炭素化と外部評価
これらの活動を通じ、2014年度には2005 年比22.4%のCO2 排出量削減となり、CMP2010の目標を達成した。
キャンパス電力デマンドの見える化Web画面
EM研による個別空調の省エネ制御実証例
省エネ推進経費(学内ESCO)の財源
附属図書館のESCO実績
キャンパスマスタープランに基づくCO2排出量の推移
コミッショニング(施設性能検証)の導入
施設に求める要求性能を明確化し、設計者・施工者の目標と責任を明らかにするためのコミッショニングの手法を導入し、企画段階においてOPR(企画・設計要件書)を策定している。OPR には、発注者の総合的な展望、環境・エネルギー課題への貢献姿勢、施設の特徴と性能などを基本要件とした定性的・定量的条件を明示している。
設計段階ではトータルビルコミッショニングの観点から、建築的・設備的な様々な取組の効果をシミュレーションによって求め、費用対効果に基づいて方針を決定する。また、OPRと設計図書の関係を示す設計主旨文書の提示を求め、施工段階ではそれに基づく施工を要求するなど、目標性能を実現する体制を整えている。
プロジェクトの特徴に応じてその導入範囲は様々であるが、外部専門家とも連携しつつ、第三者的立場から性能検証会議を運営し、コミッショニングを主導している。
コミッショニングのプロセス
トータルビルコミッショニングの範囲
(BCPを含めた場合)